がんばれアグリハッカーズ!

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アグリビジネス創造フェア2012備忘録

★最新の農業技術や導入事例の展示会★

今年のアグリビジネス創造フェア&アグロイノベーションで気になったものを、備忘録として書いておきます。雑感まじりですので、間違いがありましたら遠慮なくご指摘ください。

今回は創造フェアに出展していた最新技術です。

 

1.種から育てるイチゴ 種子繁殖型品種(イチゴ種子繁殖型品種コンソーシアム)

http://www.asahi.com/food/news/TKY201205170248.html

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006427231

http://www.mate.pref.mie.lg.jp/marc/SEIKA/H21/h21_13e_itigo.pdf

 

イチゴは親株から出てくるツル(ランナー)から次世代の株を繁殖しますが、この品種は種子で繁殖します。 

私はイチゴのプロでないので、品質について良し悪しの判断はできませんが、記事やプレゼンにあったような効率性を考えると用途次第で価値はあるという印象は受けました。

まあ個人的には、


・果実表面の小さい種子を取り出す方法として、果肉や果皮を酵素で分解していること
・その酵素はヤクルトで開発されており、すでに研究や加工の分野で広く用いられていること
・イチゴの種子単独でも加工品として価値があり、イチゴのスイーツ各種に入っているツブツブ(種子)として用いられていること

という話のほうが面白かったです。 

.枝変わり突然変異セイヨウナシの研究(名古屋大学大学院生命農学研究科

http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/~hort/shira/pear/pear.html

http://www.naro.affrc.go.jp/brain/inv_up/interim_report/2011/044002.html

 

「枝変わり」とは突然変異の一つで、一本の樹の、一本の枝だけに異なる性質があらわれる現状です。本研究の発端になったのは、山形県の果樹園で見つかった枝変わりのセイヨウナシ(ラ・フランス)で、一本の枝にだけ通常の2倍以上の大きさになる、巨大な果実を成らせるそうです。

大きな果実が成るという変異は時折観察される現象ですが、2倍近く果実が大きくなる例は大変稀。また果実が大きいにも関わらず大味にならず、糖度は同程度かそれ以上という、良好な食味に。

前置きが長くなりましたが、要するにこの研究の狙いは「突然変異遺伝子を特定して、より大きく、高い糖度の果実を作出すること」です。

洋ナシはバラ科で、国内の主要な果樹はほとんどがバラ科です。その機構が解明されれば、バラ科果樹の育種に革新をもたらし、日本の果樹産業の競争力強化に繋がることになると考えられます。

農研機構のサイトにあった、イノベーション創出基礎的研究推進事業中間評価結果では、「ちょっと急げよ的な苦言が呈されていました。果樹農家的には是非頑張って欲しいですね。

 

 

3.根頭がんしゅ病抵抗性台木の育成(岐阜大学応用生物科学部生産環境科学課程)

http://www1.gifu-u.ac.jp/~hort/kennkyuunaiyou11.htm

http://www.hinsyu.maff.go.jp/gazette/syutugan/contents/124syutugan.pdf (p8の岐阜大台木1号)

 

根頭がんしゅ病とはバラの難防除病害で、根に大きなコブができ、やがて崩壊します。感染した株は周囲の株に比べ生育が劣るため、競争に負けて枯死します。一度感染すると治癒することができません。また周囲に感染して拡散し、切りバラ生産はもちろん、バラ園でも大きな問題になっています。

その厄介な病害に対して抵抗性をもつ台木が20年にわたる研究から育成された…という話です。

抵抗性台木を用いることで、バラの生産性を向上させることができますし、同じく根頭がんしゅ病に苦しむ他のバラ科植物への応用も期待されます。

 

4.植物の根への光照射による生長促進効果(明治大学農学部)

http://twitdoc.com/upload/riibs1935/jpa-2012196202.pdf

http://jstshingi.jp/ryu-mei/2012/pamphlet.pdf

 

光を浴びて光合成をするのは、ご存知のとおり「葉」です。

しかし根に光を照射することで形態変化を起こし、さらには地上部の生育にも影響を及ぼすそうです。会場では水耕栽培装置の底面にLEDが設置して、根に光を浴びせていました。

現在のところその機構ははっきりわかっていませんが、

・赤色か青色の光を照射すると地上部の生育が促進される

・照射量の違いにより、生育に差異が生じる

という事実はわかっているそうです。

機構が解明されれば、植物工場における生産性を向上させる新たな栽培法として期待できます。


 以上、気になった最新技術ということでご紹介がてら記録しておきます。

ちなみにアグリビジネス創造フェアの出展者一覧は下記のリンクで見られます。研究者名や研究機関の詳細を確認したい方はどうぞこちらから。

http://agribiz-fair.jp/pr/